完訳という形式
書籍
サイトの記事が一節を読むのに対し、書籍は作品全体の構造を最後までたどるための形式です。以下はこのサイトが扱う原典に対応する現代語訳です。
サイト掲載の記事とは別に、各原典の全体を読むための完訳を刊行しています。サイトの訳文と解説は記事ごとに新しく書き起こしたもので、書籍の本文とは別のものです。
「完全現代語訳」と呼んでいるもの
この言葉を、次の意味で使っています。
- 全文を訳します。読みどころだけを選んで並べた本ではありません。地味な箇条書きも、繰り返しの多い箇所も、そのまま訳します
- 順序を変えません。原典が置いた巻立てと節の並びのまま進みます。分かりやすく組み替えることはしません
- 訳文と解説を分けます。補足は補足として置き、訳文に溶かし込みません
抄訳や意訳が悪いという話ではありません。ただ、抜き出した部分だけを読むと、その一節が何のあとに置かれ、何の前に来るのかが消えます。「風林火山」も「是非に及ばず」も、有名なのは短い一句のほうです。前後を残したまま読めるようにするのが、完訳という形式の役目だと考えています。
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戦国
合戦の記録と、軍記と、足軽の語り。同じ時代を、違う立場から書いた文章が並びます。戦国カテゴリの記事では、これらの原典から一節ずつ取り上げています。
超完全版 信長公記 全巻合本版
太田牛一が織田信長の生涯を書き留めた記録です。首巻から巻十五まで、全巻を通して訳しました。上巻・下巻の分冊版もあります。
桶狭間も、長篠も、本能寺も入っています。ただし読んでみると、有名な場面ばかりではありません。誰が何石を与えられ、どの城が普請され、どの道が通されたか。そういう記述が延々と続きます。信長の一代記であると同時に、事務の記録でもあります。
完全現代語 甲陽軍鑑
武田信玄と勝頼の時代を伝える軍記です。品第一から品第五十九まで、解説を付けて訳しました。
合戦の話だけではありません。大将の心得、家臣の評判、軍法、城の取り方。「風林火山」の旗も、「人は城」の歌も、この書物の中にあります。史料としての扱いには議論がありますが、武田家が自分たちをどう記憶したかを知るには、これ以外にありません。
完全現代語訳 雑兵物語 上巻+下巻
足軽や小者が、自分の役目について語る形で書かれた本です。上下二巻を訳しました。
槍を持つ者、鉄砲を持つ者、馬を引く者、荷を運ぶ者。それぞれが口語で助言します。腹の減り方、荷の縛り方、逃げ方まで出てきます。大将の視点で書かれた軍記とは、見えている景色がまるで違います。
完全現代語訳 豊臣秀吉一級資料集
『川角太閤記』『天正記』『大かうさまくんきのうち』を一冊にまとめ、解説を付けて訳しました。
秀吉については、後世の講談や小説が作った像がとくに厚く重なっています。同時代に近い資料を三つ並べて読むと、どこまでが古い記述で、どこからが後から足されたのかが見分けやすくなります。
忍術
忍術書は、技を並べただけの本ではありません。誰が、何のために使うのか。その断り書きが先に来ます。忍術カテゴリの記事では、その順序のまま読んでいます。
完全現代語訳・万川集海
三大忍術書のうち、いちばん大きな書物です。国立公文書館の記録では、藤林保武の著、二十二巻および軍用秘記一巻。その全体を訳しました。
巻の並びは、正心、大将の心得、陽忍、陰忍、時と天候、そして器具と進みます。道具の図が出てくるのは、ずっと後ろのほうです。技の書としてだけ読むと、この構成の意味が落ちます。
完全現代語訳 正忍記・忍秘伝
三大忍術書のうち二書を、補足を付けて訳しました。
『正忍記』は名取正澄の名で伝わる三巻本です。七方出(七つの変装)や、忍び六具(携えた六つの道具)が出てきます。『忍秘伝』は四巻構成の写本で、梯子の作り方のような、手を動かす記述が多く残っています。どちらも『万川集海』より短く、そのぶん一つひとつの項目が具体的です。
三秘伝合本 完全現代語訳 万川集海・正忍記・忍秘伝
三大忍術書をすべて訳し、一冊にまとめた合本版です。補足付き。
三書を並べると、同じ事柄でも書き方が違うことが分かります。ある書が詳しく説明していることを、別の書は一行で済ませる。逆もあります。一書だけを読んでいると、その書の言い方が忍術の全体だと思えてしまいます。
忍術からスパイ戦へ
「最後の忍者」と呼ばれた藤田西湖が、甲賀流忍術と近代のスパイ戦について語った記述を扱います。秘伝書を参照した解説付き。
近代に書かれたものなので、江戸期の秘伝書とは性格が違います。どこまでが古い伝承で、どこからが本人の時代の話なのか。そこを分けながら読む必要があります。
剣術
剣術書は自己啓発の言葉として引かれがちですが、原典では技術の説明のなかに置かれています。剣術カテゴリの記事では、その位置に戻して読んでいます。
現代語訳・五輪書 決定版
宮本武蔵『五輪書』を、解説と補足を付けて訳しました。
地・水・火・風・空の五巻。地の巻で道の全体を描き、水の巻で構えと太刀筋、火の巻で戦いの場面、風の巻で他流を論じ、最後に短い空の巻が来ます。「観の目つよく」も「空」も、この並びの中に置かれています。有名な句を先に読むより、巻の順に進むほうが意味を取り違えません。
完全現代語版 兵法家伝書
柳生宗矩が柳生新陰流の剣理を書き残したものを、解説を付けて訳しました。
上巻を「殺人刀」、下巻を「活人剣」と名づけ、末尾に「無刀」の巻を置きます。人を殺す刀が、なぜ人を生かす剣になるのか。その説明は巻末まで出てきません。題名だけを標語として引くと、この逆説が抜け落ちます。
兵法
武経七書は、宋の朝廷が武学の正典として定めた七つの兵書です。兵法カテゴリの記事では、その一節ずつを原文から読んでいます。
完全現代語訳 武経七書 巻一 六韜・三略・司馬法
七書のうち三書を、原文・読み下し・現代語訳・語句メモとともに収めました。
『六韜』は太公望に仮託された六十篇で、政治から野戦の実務までを問答で扱います。『三略』は黄石公が張良に授けたと伝える三巻。『司馬法』は七書のなかでも古い層に属し、戦争を国家の礼の一部として語ります。三書とも『孫子』とは書きぶりが違い、並べて読むと七書という枠組みの幅が見えます。
完全現代語訳 武経七書 巻二 孫子・呉子・尉繚子・李衛公問対
七書の残る四書を収めました。
『孫子』十三篇のほか、呉起の『呉子』、軍法と軍令に踏み込む『尉繚子』、唐の太宗と李靖の対話という形で先行の兵書を論じる『李衛公問対』が入ります。『孫子』だけを読むと見えないものが、四書を並べると出てきます。
完全現代語訳 武経七書 合本版
巻一・巻二を一冊にまとめた版です。七書すべてが入ります。
現代語訳・解説付き 闘戦経
日本で書かれた兵法書です。序と全五十三章に、書き下し・現代語訳・解説を付けました。
武経七書には含まれません。大江家に伝わったとされる短い書物で、『孫子』への意識をはっきり示しながら、武を天地生成の根に置くところから始まります。
買う前に、記事で試せます
どの原典も、このサイトの記事で一節ずつ読めます。原文、新しく起こした現代語訳、語句の注、そして「この一節からは言えないこと」。書籍と同じ方針で書いています。
訳文の調子が合うかどうか、記事で確かめてから決めていただければと思います。戦国・忍術・剣術・兵法のどこからでもどうぞ。
英語版
上記の多くは英語版も刊行しています。英語版の書籍一覧もご覧ください。
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